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スレーター行列式を用いた量子モンテカルロ法


○大塚勇起、永瀬茂 (分子科学研究所)

【序】量子モンテカルロ法の一つである拡散(プロジェクタ)モンテカルロ法は、近年、高い並列化効率と精度によって注目されている。Fig.1 電子配置を用いたプロジェクタモンテカルロ法しかしながら、この方法には電子を粒子として扱うことから、そのままシミュレーションを行うとボゾンの基底状態に収束するという問題がある。このフェルミオン問題を回避するために一般的に用いられている節固定近似を使用すると、試行関数依存性が生じてしまう。我々は、プロジェクタモンテカルロ法の中で電子を Configuration State Function(CSF) を用いて表すことによって、試行関数依存性のない理論を提案し、LiHやH4などの小分子に応用した[1](Fig.1)。精度はウォーカー(サンプル)数のみに依存し、極限としてFull-CI解に収束する。今回は、電子をスレーター行列式によって表し、より実用的なアルゴリズムとプログラムを開発した。



【理論と計算結果】今回の方法では、虚時間推進演算子から計算される遷移確率に従って起こるスレーター行列式間の遷移をモンテカルロシミュレーションによって表す。十分なステップの後、スレーター行列式の定常分布が得られ、波動関数とエネルギーは、それぞれのスレーター行列式|i 〉の個数niを使って、次のように定義される。


Fig.2 N2分子のポテンシャルカーブ波動関数はCIの形をしているため、エネルギーはFull-CI解より低くなることは無い。
今回、並列計算が可能な一般的なプログラムをGAMESS[2]を基に開発した。Fig. 2にN2 分子の基底状態のポテンシャルカーブに応用した結果を示す。6-31G基底を用いたときのCASCI次元(1s core frozen)は2,388,528に対して、ウォーカー数を2 ×106にして計算を行った。Fig. 2に示すように、今回の方法(PMC)は、HF配置のみからシミュレーションを始めたにもかかわらず、単参照理論と比較して、全ての領域において与えられた空間での厳密解であるCASCIの結果を精度良く再現した。また、励起状態は、虚時間推進演算子から基底状態と低次の励起状態の成分を引くことによって、基底状態とアルゴリズムを大きく変えることなく計算することが出来る。


[1] 大塚, 永瀬 Chem. Phys. Lett. 463 (2008) 431.
[2] M.W. Schmidt et al., J. Comput. Chem. 14 (1993) 1347.


*出典:ナノ統合第3回公開シンポジウム要旨集より。
 掲載に際しては永瀬茂教授のご了承を得ています。



永瀬研究室ホームページへのリンク: http://snl.ims.ac.jp/

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