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細胞膜模倣脂質モデル膜の分子動力学シミュレーション


○安藤嘉倫,岡崎進 (名古屋大 化学・生物工)

 現在, 癌化細胞選択性ドラッグデリバリーシステムが様々提案されている. 癌化細胞選択性は膜流動性や膜構造などの物性の違いに起因すると推測されているものの分子レベルでの詳細はほとんど解っていない. 本研究では細胞膜の脂質成分分析の結果に基づき 20 種以上の脂質成分からなる正常および癌化細胞の細胞膜を模倣した多成分脂質二重層モデル膜を構築した. モデル化の要点は以下の3 つである. (1) コレステロールとその他脂質とのモル比, (2) リン脂質 (ホスファチヂルコリン, ホスファチヂルセリン, ホスファチヂルエタノールアミン, ホスファチヂルイノシトール),リゾリン脂質およびスフィンゴ脂質の各モル比, (3)リン脂質sn-1, sn-2 脂肪酸の飽和/不飽和割合. 正常および癌化細胞膜モデルそれぞれについて, 3 つの異なる初期座標を用意し, 37℃, 静水圧1 atm 条件下で分子動力学計算を行った. 構造とダイナミクスそれぞれについて分子レベルからその差異を議論した.
 分子間相互作用ポテンシャルとして脂質分子にはCHARMM27 を水分子にはTIP4P を使用した. 短距離Lennard-Jones 相互作用は10Åでカットオフする一方, 長距離クーロン相互作用はPME法により10-5の精度で計算した. 静水圧を再現するようアンサンブルにはParrinello-Rahman NPTアンサンブルを選んだ. 温度制御はNose-Hoover chain により行った. 運動方程式の数値積分はRESPA 法により行った. SHAKE/ROLL, RATTLE/ROLL 法により水素を含む化学結合間距離に距離拘束条件を導入し時間刻みΔt を 1 fs に取った. カウンターイオンNa+を含む初期座標は初期座標作成ソフトウェア NANO-IGNITION[1] により作成した. 初期座標のポテンシャルエネルギー最適化計算および実際の MD 計算は分子動力学計算ソフトウェア MODYLAS[2] を用いた.


100 ns 計算時点でのスナップショット
図: 100 ns 計算時点でのスナップショット. (a) 正常細胞膜モデル, (b) 癌化 細胞膜モデル. 二重層膜上下の灰色は水分子, 色付き太線は各種リン脂質, spacefill 表示はコレステロール.


[1]
http://nano-ignition.ims.ac.jp/
[2] Y. Andoh, N. Yoshii, A. Yamada, K. Fujimoto, K. Iwahashi, F. Mizutani and S. Okazaki, “A highly parallelized general purpose molecular dynamics program, MODYLAS, for the next-generation supercomputer”, The 1st International Conference of the Grand Challenge to Next-Generation Integrated Nanoscience, Tokyo (2008-6).


*出典:ナノ統合
第3回公開シンポジウム要旨集より。
 掲載に際しては岡崎進教授のご了承を得ています。



岡崎研究室ホームページへのリンク: http://simulo.apchem.nagoya-u.ac.jp/okazakigroup.html

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