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動的密度行列繰り込み群法の高度化と有限温度への適用


(京大基研) 遠山 貴己

1.はじめに
 半導体を用いた光学素子に代わるものとして、モット絶縁体を用いた新規ナノ光学素子を提案している。次元性が低いほど非線形感受率は一般に増大する。そこで一次元性を有するモット絶縁体がターゲットとなる。光学素子としての機能を明らかにするには、ギャップを超えた光励起状態の特徴と光照射後の緩和過程の理解が重要になる。そのため、一次元モット絶縁体の光励起状態を記述可能な模型(電子・格子相互作用を取り込んだ一次元拡張ハバード模型)を厳密に解く必要がある。その際、有限数の格子点からなる一次元強相関系を数値的に厳密に扱える手法として密度行列繰り込み群法が有効である。特に、光励起状態の特徴を明らかにするには動的に拡張された密度行列繰り込み群法 (Dynamical DMRG) が最適である。我々は、このDynamical DMRGを用いて一次元モット絶縁体の線形および非線形光学応答感受率の計算や、光照射により作られた励起状態の時間発展を追うことで緩和過程のシミュレーションを行っている。


2.Dynamical DMRG の高度化と有限温度への拡張
 Dynamical DMRGを用いると振動数に依存した物理量の計算が可能であるが、各振動数での計算は独立に実行できる。そのため、振動数に関する並列化は容易である。与えられた振動数のもとで、最も計算時間が必要とされるのは、系の基底状態および振動数を含む補正ベクトルの計算である。両者はともにターゲット状態と呼ばれ、系の密度行列を構成するために用いられる。基底状態の計算にはランチョス法を用いている。対角化すべきハミルトニアン行列の次元は数千万から数億のオーダーである。一方、補正ベクトルの計算には共役勾配法やランチョス法による疑似固有状態法などを用いている。どちらの場合も、コアとなる計算部分は行列・ベクトル積である。その効率化のため、リストアクセスの効率化の検討、ベクトル転送量削減方法の検討等を行っている。このようなDynamical DMRG の高度化のほか、最近、有限温度に対するDynamical DMRGの開発を行った [1]。これは、ターゲット状態として有限温度に有効な状態を採用し、多項式展開法と初期ベクトルのランダム・サンプリングを組み合わせてそのターゲット状態を計算する手法であり、絶対零度のDynamical DMRG を素直に拡張した形式となっている。そのため、低温で正確な結果を与える。


3.電子・格子相互作用を取り込んだ一次元拡張ハバード模型への適用
 開発したDynamical DMRG計算コードを用いて、電子・格子相互作用を取り込んだハーフ・フィールドの一次元拡張ハバード・ホルシュタイン模型に対する線形光学応答や一粒子スペクトル関数といった基本的物理量の特徴を明らかにしてきた [2]。新しく開発した有限温度のDynamical DMRGを用いて線形光学応答スペクトルの温度変化も計算しつつある。また、Dynamical DMRGの考え方を応用して時間に依存する物理量の計算も行っている。特に、上記の模型の光励起後のダイナミクスの予備的な計算を進めており、一次元モット絶縁体の非線形光学応答の緩和機構を理解するための基盤となると期待される
 中核アプリケーションとしての本研究は、曽田繁利(京大基研)、松枝宏明(仙台電波高専)各氏との共同研究である。
図1 一次元拡張ハバード模型の動的電流―電流相関関数の温度依存性
図1 一次元拡張ハバード模型の動的電流―電流相関関数の温度依存性


【参考文献】
[1] T. Tohyama and S. Sota, Phys. Rev. B 78, 113101 (2008).
[2] T. Tohyama and H. Matsueda, Prog. Theor. Phys. Suppl. 176, 165 (2008).


*出典:ナノ統合第3回公開シンポジウム要旨集より。
 掲載に際しては遠山貴己教授のご了承を得ています。



遠山研究室ホームページへのリンク: http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~tohyama/

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