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フラグメント分子軌道法の開発と応用


(産総研・計算科学)北浦和夫


1.はじめに
 数千・数万原子からなる巨大分子・分子系の計算は、これまで古典的分子力場でしか行うことができなかった。たとえば、タンパク質のような巨大分子をまるごと量子化学計算することは、計算法開発者の課題のひとつである。私たちはフラグメント分子軌道(FMO)法を開発し、この課題に挑戦している。


2.FMOソフトウェアの開発 Fig.1 分子のフラグメントへの分割。
 FMO法は、分子を小さなフラグメントに分割し(Fig.1)、フラグメント(モノマー)とフラグメントペア(ダイマー)を、他のフラグメントが及ぼす静電ポテンシャルを考慮して、ab initio MO法で計算し、それぞれの全エネルギー と を用いて全系の全エネルギー を、次式で近似的に計算する方法である。


    計算式





Tabel 1. FMO ver.3.2で可能なFMO計算の一覧
計算式
本方法は、高い精度で通常のab initio MO計算の結果を再現するとともに、高並列計算を効率よく行うのに適している。
 私たちはFMO法のプログラムを開発し、アイオワ大学のGordon教授のグループで開発されたab initio MO計算プログラムパッケージであるGAMESSに組み込んで公開している。2009年1月にリリースされた最新版のGAMESSでは、FMO法のバージョン3.2を公開した。これで可能な量子化学計算の一覧をTable1に示す。


3.FMOの応用 計算式
 FMO法によると、タンパク質とリガンドの相互作用で、個々のアミノ酸残基とリガンドの相互作用エネルギーを求めることができることから、ドラッグデザインにおいて有用な知見が得られるものと期待されて、多数の応用研究がなされている[1,2]。最近、巨大系の励起状態計算法(FMO-TDDFT)を開発し、分子性結晶やタンパク質の励起エネルギー計算が可能になった(Fig.2は、計算したphoto active yellow protein[3])。また、フラグメント境界の扱いを改良して、ゼオライトなど共有結晶系の計算もできるようになった。





【参考文献】
1. D.G.Fedorov, K.Kitaura, J. Phys. Chem. A, 111, 6904-6914 (2007)
2. D.G.Fedorov and K.Kitaura, Eds,  “The Fragment Molecular Orbital Method:
  Practical Applications to Large Molecular Systems”, CRC Press, 2009年4月
  (出版予定)。
3. M.Chiba, D.G.Fedorov, K.Kitaura, J. Chem. Phys., 127, 104108 (2007).



*出典:ナノ統合第3回公開シンポジウム要旨集より。
 掲載に際しては北浦和夫教授のご了承を得ています。

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