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実空間密度汎関数法コード「RSDFT」の開発と応用


(筑波大計科セ)岩田潤一、(東大物工)押山淳


1.はじめに
 密度汎関数法に基づく量子力学的第一原理計算を用いた物性研究のターゲットとしてナノメートルサイズの系が含まれるようになり、これらを扱うために数千〜数万あるいはそれ以上の原子数から構成される系に対する超大規模計算を実現することが喫緊の課題となっている。 またナノメートル規模の第一原理計算は応用上も重要な役割を担うと期待されている。 例えば半導体デバイスとして最も重要なシリコンMOSFETにおいて微細化の限界を打ち破るために新奇ナノ構造の導入が不可避であると予想されており、そのときにスケーリング則にとって代わる新たな性能向上指針として、実デバイスサイズでの量子力学的第一原理計算の可能性が浮かび上がってくる。 本発表では、このようなナノメートルサイズの系に対する第一原理計算を超並列計算機上で実現するためにこれまで我々が開発を行ってきた、実空間密度汎関数法コード「RSDFT」の概要と応用をご紹介する。


2.RSDFTの開発
 次世代スパコン「京」のような数万〜数十万コアを用いた超並列計算も視野に入れ、我々は実空間差分法による密度汎関数計算コードを行ってきた[1]。 実空間法は、従来の平面波展開法に比べ、演算の核となる部分で高速フーリエ変換が必要ないため並列化の点で有利な手法となっている。 並列化はMPIおよびOpenMPによるハイブリッド並列となっている。 全体の演算量はシステムサイズ(原子数)の3乗に比例し、近似を導入しない通常のアルゴリズムに基づいている。 ボトルネックとなるO(N3)演算を行うルーチン、例えばGram-Schmidt直交化においては、行列積の形で大部分の演算を実行する新たなアルゴリズムを開発し、これによってピークの8割〜9割という演算性能を達成している[1]。


3.シリコンナノワイヤの電子状態−システムサイズ依存性−
 今から10〜20年後、現行の平面型電界効果トランジスタを微細化によって性能向上させることは限界に達する事が確実視されており、それ以後を担う物として「シリコンナノワイヤ型トランジスタ」が有望視されている。 その世代のチャネル長は10nm以下になると目されており、またこれまでの実験的蓄積から、ワイヤ径として10nm〜20nm程度が最適であるという予想がなされている。 しかしながら実際どのサイズや断面形状が最適であるかを予測することは困難で、これをRSDFTによる第一原理計算によって可能にしようというのが我々の狙いである。 図1に円形断面(100)を持つシリコンナノワイヤの伝導帯底付近のバンド構造をいくつかの径サイズについて計算した結果を示す。


図1 直径(a)2nm, (b)4nm, (c)8nmのシリコンナノワイヤの伝導帯底付近のバンド構造
図1 直径(a)2nm, (b)4nm, (c)8nmのシリコンナノワイヤの伝導帯底付近のバンド構造


【参考文献】[1] J.-I. Iwata, et al., J. Comp. Phys. 229, 2339 (2010).



*出典:ナノ統合第5回公開シンポジウム要旨集より。
 掲載に際しては岩田潤一氏、押山淳教授のご了承を得ています。



押山研究室ホームページへのリンク: http://www.comas.t.u-tokyo.ac.jp/HP/index_j.html

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