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希薄磁性半導体の電子状態と磁気秩序


(東北大金研)○大江純一郎、友田良寛、Nejat Bulut、前川禎通、(東大工)有田亮太郎、中村和磨


1.はじめに
 半導体ホストに磁性不純物をドープした(Ga,Mn)As 等の磁性半導体[図1]は、外部電場や光照射によるキャリア濃度の制御により磁気特性を変調できるという観点から、スピンエレクトロニクス材料として期待されている。 磁性半導体では、磁性不純物の局在電子が磁気的、ホスト半導体の遍歴したキャリアが電気的特性を担っている。 本研究では、ホスト半導体・局在軌道のエネルギー項、それらの間の混成項、および局在軌道上のクーロン相互作用からなる不純物アンダーソンモデルを、量子モンテカルロ法で解析した。 その結果、強磁性の発現とそのメカニズム、さらにその温度依存性を説明し、具体的な(Ga,Mn)As に対する結果が実験結果を良く説明できることを示した。

図1:(Ga,Mn)Asジンクブレンド構造。GaはランダムにMnと置換される。


2.磁性半導体中の磁気秩序を求めるソフトウエアの開発 と計算結果
 まず、局所密度近似(LDA)を用いて(Ga, Mn)Asの各軌道の分散関係と、その混成エネルギーを計算した。さらに、それらの値を代入した不純物アンダーソンモデルに対して量子モンテカルロ解析を行った。この方法により、(Ga,Mn)Asに限らず、現実的な物質の計算が可能になった。 図2は、GaAs中に2個のMn原子を置いたときの磁気相関を表しており、温度の低下とともに強磁性相関が大きく長距離に及ぶことがわかる。この結果は、磁性半導体おける磁気相関が、金属中のRKKY相互作用とは本質的に異なることを示唆している。 さらに、強磁性のメカニズムを説明するために、キャリアの状態を解析した。図3はMn原子とキャリア(正孔)の磁気相関を表しており、これらの間には反強磁性的な磁気相関が現れている。その理由は、Mnの局在軌道が↑スピンに占有されていれば、それに伴い荷電子帯の↑スピンの状態密度の一部が半導体ギャップ内に移行し、ホスト電子は相対的に↓電子が多くなるためと考えられる。 これは混成項によるホスト電子と局在軌道電子との交換エネルギーに起因する反強磁性的相関と理解できる。図3に示されているように、ホールはある程度広がった分布をもつので、この範囲に磁性不純物があれば、その磁性不純物とも反強磁性的相関をもつ。 従って、それらの磁性不純物間には図2のような強磁性的相関が生じる。この新しい方法を用いた計算結果は、角度分解光電子分光(ARPES)、走査トンネル顕微鏡(STM)等の実験結果と良く一致することが示された。これらの結果から、不純物アンダーソンモデルが磁性半導体の記述に適していること、さらには本研究で用いた手法が新規磁性半導体物質の探索に有効であることが示された。
図2:二つのMn磁性不純物間のスピン相関。横軸はMn間の距離。  図3:Mn-キャリア間の磁気相関。横軸はMnからの距離


【参考文献】
J. Ohe, Y. Tomoda, N. Bulut, R. Arita, K. Nakamura, and S. Maekawa
J. Phys. Soc. Jpn. 78, 083703 (2009).


*出典:ナノ統合第3回公開シンポジウム要旨集より。
 掲載に際しては前川禎通教授のご了承を得ています。



前川研究室ホームページへのリンク: http://www.maekawa-lab.imr.tohoku.ac.jp/

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